獣医さんがものづくり村で開業?【後編】

福中夏生さん

現在、ものづくり村では、毎週金曜日に「親子でのんびり こぐまカフェ」というカフェを営業しています。カフェと獣医を兼業する福中さんとのお話から、足寄の子育て世代の女性たちの暮らしや、福中さんの「何も無いから諦める」ではなく「無いから作る」というバイタリティについて掘り下げて伺ってみたいと思います。

足寄町の子育て環境とママさんネットワーク

そもそも足寄には、子供たちがどのくらいいるのでしょう?保育園はいくつあるんですか?

福中さん保育園は市街に1つ、郊外に3つあります。

お母さんネットワークは狭いですか?大体知り合いみたいな?

福中さんそうですね、子供の学年が同じだと大体知り合いです。その繋がりで、子育て時期のお母さん同士は、なんとなくお互い知っている、みたいな感じです。

それから、都内ではママ友バトルや保育士いじめとかよく聞くのですが、こっちはそういうのってないですか?

福中さんこっちのお母さん達は穏やかですよ 笑 そもそも逃げ場がないですからね。引越す予定がない人はここで問題起こすと大変、保育園から高校までずっと一緒だから喧嘩してもお互い良いことがないですよ。

なるほど、コミュニティが狭いが故に、みなさんの社会性が保たれるんですね。

福中さんもちろんマイナスの我慢だけじゃなくて、全体的に穏やかにふんわり仲良くやってる人が多いと思います。

お母さん同士の人間関係が良いのは素晴らしい環境ですね!
こういうくつろげる場所が増えれば、足寄は更に子育てしやすい町になりますね。

福中さんそうですね、もう少し数があってもいいと思います。どうしても行政が用意したものだけしかないと、みんながそこに集中して、そこで苦しくなって人間関係ギクシャクすることもあると思います。いろんな場所、選択肢があるといいと思います。

イベント開催〜日替わり店主〜誰でもチャレンジできる場所

「こぐまカフェ」ではイベントも開催されてますか?

福中さんこの前ハンドドリップコーヒーの入れ方のイベント、それからリコーダーコンサートもやりましたよ!上の世代の方々で、リコーダーのサークルがあって、その人たちに演奏してもらいました。「次は何やろうかな」と考えるのもとても面白いです。

今は一人で運営されてるんですよね?子育てに獣医業、イベントの企画までやると、いろいろ忙しくて大変じゃないですか?

福中さんイベントの時は誰かしら手伝ってくれたり、木村さんや佐野さんもサポートしてくれます。「こぐまカフェ」が忙しい時は、木村さんの奥さんのあやみさんがキッチンに立って営業してくれることもあり、すごく助かっています。

あ、それいいですね!「日替わり店主」って、来る人にとっても楽しそう。

福中さん私もそういうのが良いなと思ってて、こういう場所って「誰じゃないとダメ」みたいな感じで場所や機会を独占するんじゃなくて、やりたい人が「私でもできるかな」って、「チャレンジできる場」であってほしいと思っています。

すごく共感します。ちなみに、ご自宅で親子カフェをやってみるという選択肢はなかったのですか?

福中さんうーん…。やろうと思えばできますが…。でも、個人のお宅に入るっていうのは緊張しますよね、私は苦手で。だからこういうオープンな場所、緩衝地帯があると気軽に集まりやすいのかなと思います。

「ないから諦めるという姿勢」を子供には見せないように

足寄じゃなくて隣の町とかには、居心地の良い場所ってあるですか?お母さん達が遊びに行く場所、好きな場所など。

福中さんいや、あんまりないですね。子供図書館、町の体育館、子供ルーム…うん…。
だから「無いものを作ってやろう」という気持ちがあります。「無いから無いから」っていう背中を子供に見せたくないんです。親がそうしてしまうと、子供たちもこの町に対してそういうイメージを持って育ってしまう。「無いものは諦めるしかないんだ」と。

やっぱり東京から出てきて、自分の故郷じゃない分、開拓精神に火が付く感じってありますか?自分の地元だと全部見えたような気がしてしまい頭打ちに感じてしまうケースもありますよね。

福中さん私は東京で生まれて、何でもある環境で育ってきたので、子供に対して負い目みたいなものを感じる時があります。私が足寄を選んだから、子供たちは私に比べて、文化的な体験や機会に恵まれてないのかなって。私のせいで、彼らの可能性をつぶしてしまうことがとても申し訳ない、と思うこともあって。「ごめんね、母ちゃん、がんばるから!」みたいな感じで勝手に火がついてたりします 笑

僕も東京でうまれて、ものに囲まれて、習い事もやって、多種多様な人々と出会い、音楽にも芸術にもたくさん触れられて、そうしたら今は逆に、なんでもある東京に興味なくなってしまって、無い場所で何かを生み出す活動にすごく惹かれます。
自分に子供ができたら、何もない場所で、子供が自ら遊びや必要なものを作るように育てたいな、と思っていますが、実際に子供ができたら、やはり親としては機会を与えてやりたくなりますかね…。

福中さんそういえば、この間帯広にチームラボの展示が来たんですよ。帯広美術館の入場記録を塗り替えたらしいです。子供たちも大喜びでした。東京は常設ですよね、羨ましい。そうやって帯広にいけばそうやっていろんな機会がありますが、やはり帯広も行ける人しか行けないですよね。足寄では文化的なイベントが少ないですが、これからをどんどん作っていって、みんなが遊びに気軽に来られたらいいな、と思います。

「痒い場所に手が届く」「勉強じゃなくて遊びの活動」を大切にしたい

「親子カフェ」って、やっぱりお母さんとしての視点からいろんなアイデアが出てくるのでしょうか?愚問かもしれませんが、例えば、子供がいない僕でも親子カフェの運営ってできますかね?

福中さんうん、難しいかもしれない。親になってみないとわからない「細かいニーズ」がいっぱいあるんです。

名前のない家事みたいな 笑

福中さんそうそう 笑 育児中のお母さん達って「そんなところ?」みたいなちょっとしたところが満たされないことが重なるんですよね。例えば、コーヒー飲みたいんだけど、コーヒー入れた瞬間、子供が泣き出して、終わったらコーヒー冷えてる、とか。お座敷がないと歩かない子供は降ろせないから、椅子があっても結局ずっと抱っこしながら座ってたり。そういうのは経験者だからこそわかることだと思いますし、そういう気配りをカフェで実践しています。

なるほど、勉強になります…。
どんどん話が変わりますが、お母さんの問題といえば、母子の「肉体的な健康」と「精神的な健康」の話をよく聞きます。子供を産んだ後に体調や精神を崩す人が多いといいますよね。親子カフェはそういうお母さん達の受け皿にもなるのでしょうか。

福中さんうん、なりたいですね。

そうしたら、そういう勉強会とかもやりますか?

福中さんうーん、今のところ、勉強会的なことはやろうと思ってないです。それよりも「気軽においしいもの食べよう、親子で楽しもう」みたいなところを大事にしていて、「楽しい」っていう気持ちをベースに繋がっていけたらいいな、と思っています。「なんかここくると、いつも楽しいことやってるよね」っていう印象を持ってもらいたい。
あたし自身は勉強も大好きですが、私は勉強しすぎて情報過多になってしまい、結果苦しい…みたいなこともあります。あと、勉強会とかは、行政もやってるんですよね、専門の方もやってるし、ここではそこまで踏み込まなくてもいいかなって思います。
勉強コミュニティみたいな、そっちばかり主張して、堅いイメージを作ってしまうと「なんか難しそうだから」って、来てもらうのに敷居が高くなりますよね。

なるほどなるほど。ちなみに、カフェのネーミングはどんな由来が??他にも好きな動物たくさんありそうですが。小鹿とか子牛とか。

福中さんうちの庭にベリーの木があるんですけど、ハスカップとか。実がなるとうちの子供が自分でもぎとって食べています。その姿が子熊みたいって思って、子熊カフェにしました。

うらやましい、自然教育ですね!大自然がすぐに隣にある足寄町の保育園はやはり自然教育に熱心でしょうか?

福中さんいや、意外とそうでもないんですよ。保育園のカリキュラムにも自然と触れ合う、とかのカリキュラムがなくて、外を散歩するぐらい。森の幼稚園みたいな活動とかあればいいのですが。これだけ山があるので、もう少し活用できれば良いなと思います。

僕は東京と山梨が拠点なのですが、山梨よりも東京の子供たちの方が自然に触れていると思うことがあります。調布の保育園は、水辺の学校とか、実際に生き物と触れ合う機会を作っていて。逆に山梨は虫に触れない子たちも結構いて。東京の子だったら「ミンミンゼミだー!」みたいに掴み取りにいくのに。

福中さんそれで、私、「こどもあそびクラブ」というのをやっているんです。佐野さん(運営委員)と協力して、山にメープルシロップを採りにいったりします。足寄は楓の木がいっぱいあるので、それを活用しようと。
楓の木に穴を開けてストローを刺すと、樹液が垂れてくるので、それを集めて煮詰めると甘いシロップになります。地域の自然の魅力を発掘したいな、と思ってそんな活動を子供たちと一緒にしています。これも勉強じゃなくて、「遊び」としてやりたいと思っています。

うーん、素晴らしい…。お母さん達の憩いの場を作ったり、子供達の遊びの場を作ったり、福中さんはこれからも様々な「暮らしやすさ」を目指した活動立ち上げていくのでしょうね!お話を伺っていて、足寄町で暮らす人たちの豊な暮らしを牽引していくリーダー的存在?という印象を受けました。今後とも応援させてください…!
今日はお忙しい中ありがとうございました。

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