シェアハウス「ながや」と生活拠点を行き来しながら、自身の得意を差し出し築いていく関係人口【後編】

 

西出さん

引き続き、紙絵作家である西出さんのインタビュー後編となります。

2020年から、「はたらくものづくり村」にある単身者用シェアハウス「ながや」と地元の札幌市を行き来しながら、活動されている紙絵作家の西出さん

前編は、足寄町を知るキッカケや「何だか惹かれていった」足寄町の人たち、そして「はたらくものづくり村」でどんな滞在を実現されたのかを中心に伺いました。

後編では、実際の住み心地や暮らす地域が変わることでクリエーションに影響はあるのかなどをお話しいただいています。十勝での生活をより身近に、また滞在や移住をご検討の方は選択肢の1つとして、読んでいただけたらうれしいです。


「ながや」の住み心地はいかがでしたか

木組みの家であることプラス 、立地的なこともあり、夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごせました。いつも木のぬくもりに包まれているので、安心感もありました。

当時一緒に住んでいた人とはそこまで綺麗好きでもなく、お互いに対して配慮する気持ちもあるので、バーベキューしたり、花火したり、一緒にビール飲んだりできてるので、心地は良いです。他の友人も一緒にごはんを食べることもあって。たまにゆるーく住人以外の人とも楽しめる時間が好きでした。

お部屋は、場所によっては駐車場が気になって、窓とかカーテンとか開けづらくて。あと、お部屋に机がないので、広いテーブルで作業したい場合は「かってば」の利用がない日に使わせてもらっていました。

 

 

足寄町の魅力的だと感じたところを教えてください

今まで、横浜と東京と、札幌と帯広と足寄に住んだ印象としては、足寄が一番皆んな楽しそうです(笑)本当に心からやりたいと思ったことをすぐ実現させて、それを周りもフォローしたり「面白いね」って言ってくれたりする環境があるのが素敵だなぁと思うし、それを見て、おそらく別の誰かも自分のやりたいことを「ちょっとやってみようかな」と思ったりできるのがすごくいいなと思います。

ここ自体も木村さんの願いがこもっている場所で、他の方も前向きにいろんなことにチャレンジしてたり、働いていた道の駅でも、皆んな助けてくれるんですよね。ものづくりに関しても「こういうのあるよ、応募してみたら?」とか。町ぐるみで応援してくれている感があります。

それに、足寄の人は心に余裕がある人が多いなって思っています。都会だと自分のことで精いっぱいだったり、自分の手が届く範囲の幸せだけを守って生きてる、みたいな感じがしてたんですけど、ここの人たちって、心に余裕があるから。だから自分の幸せっていうよりも、周りの人たちが楽しそうだったり「生き生きしてくれそうだったら私も嬉しいな」みたいな考え方をしてる人たちがいっぱいいると思っていて。だからこそ何か困った時は、前の村人とかもそうなんですけど、皆んな助けてくれるんですよ。他の人のことを思う心の余裕がある人が多い気がします。

それはまた、同じ十勝の帯広市とは違いますか

帯広に住んだのは1年ぐらいですが。スピード感でいうと、帯広はもうちょっと都会的で、面白いことに対しては「じっくりよく考えて、確実に進めよう」的なのがあるんですけど、足寄はもうちょっとスピード感があって、面白いと思ったことを勉強してからとか、もうちょっと準備してからとかじゃなくて、「やろう!」っていうノリな感じがします。「出来る時に、今やっちゃおうよ!」っていう。それにちゃんと乗ってくれる人たちがいっぱいいる。ノリのいい人たちがいっぱいいるなぁって。ポロッと言っても誰も「え?いつ?結構先にやるの?」とか言わずに「面白いね!今やろう!」っていう感じ。

「今できる範囲のことからやってみようかな」っていうのが許される町ですかね。帯広は5歩くらい行かないと、町の人たちに許容されないだろうなっていう感じがするんですけど、足寄は1歩目から歓迎してくれる。助けてくれるみたいな感じがします。

そういった地域の違いってなんでしょうか

場所ですかね。足寄の空気感。空気感ってちょっと言葉が違うかもしれないんですけど、天国に近い場所な気がしてるんですよ。帯広の空気感でいうと、帯広も十勝なので素敵なところではあるんですけど、人間の色んなものが結構多いというか。人間の社会的な色が濃いので、空気感でいうとちょっと重たい人間的な空気感があって。足寄はどっちかっていうと自然の方が多いじゃないですか? 農業もそうですし、山のパワーも、空気感も、どこか天国に近いなって思ってます。それは人の心を「1歩目でもいいから何かやってみようかな」的な心にさせるのかなと、思ったりもして。受け入れてくれる空気感。人間だけじゃなくて、環境的な自然からなにかそういう空気を感じます。

自然という余白でしょうか

余白ですね。その心の余白を作るのは、自然があるっていうことも要因の1つだと思ってます。以前、朝起きた時に外に出ると、すごい山の中にいる気分だって思う空気があったんですよ。山の中の感覚に近いです。5合目とかの感じに。(笑)

 

 

そういう自然に近い場所に身を置くという意味で、自分の中に生まれるインスピレーションは東京や横浜にいた時と違いはありますか

満員電車に乗ってたんですけど、あれに毎日乗っていたら「何か新しいことをしよう!」っていう気持ちは全然生まれないですよね。ただ眠りたいとか、休みたいとかそういう気持ちばっかりで。都会にいる時は、けっこう疲れるので、生きるので精一杯。お金も稼がなきゃいけないので、今日を乗り越えるので精一杯みたいな感じの暮らし方ですが、ここの場合は、そこそこお金稼いで、その他の時間でやりたいことができました。

ものづくりのインスピレーションとしては、都会でも自然の中でも多分変わらない。その時、感じたものを作ってるんで、おそらく変わらないと思いつつ、でも、ものづくりをしたくない時と、作りたい時とがあるじゃないですか。都会は日々の生活に追われるので、したくない時の時間の方が必然的に多くなっちゃうと思うんですけど、ここの場合はそこまで日々に追われてないので、作りたいと思う時間の方が必然的に長くなる分、インスピレーションも受けやすいのかなって思います。

時間の使い方が以前と違いますか

都会にいた頃は、ものづくりしたいって気持ちがありつつ、とにかく働くっていうことが多かったです。

それに、東京とか神奈川にいるとあんまり求められることがなかったです。まだ自分自身の技術がそんなになかったっていうのもあるのかもしれないんですけど、都会の人って、デジタルに魅力を感じているので。パパッとささっと、手間暇かけずに作ってしまうものが求められていた気がしたので、どちらかというと足寄とか、帯広とか、もうちょっと時間の流れがゆったりとしたところの人の方が、私の作るものを欲しいって言ってくれます。

 

 

この場所に期待することを教えてください

カフェをやっていた時、建物を目当てに来る方ってたくさんいて。「これを見たい」とか「すごい素敵な建物ですね」とかいう人が半分くらい。

「はたらくものづくり村」を知らなかったけど興味を持ってる人たちが十勝にもいっぱいいると思うので、今の輪の中からもうちょっと広がって、みんなで楽しめたらいいんじゃないかなと思ってます。

色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。西出さんのご活躍はinstagramからご覧いただけます。

※この記事は、2023年11月時点の情報を掲載しております。(文責・撮影  坂口阿希奈)

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